あかつきその後
2016-04-01


あかつきその後


アストロHがおじゃんになって(まだ、未確定ですが)、我が国のお家芸といわれたX線天文学が、ガックリと肩を落とす中、かろうじて復活した金星探査機の方は、今月から通常観測に移るようだ。

(日本の金星探査機 4月半ばに 金星軌道上で大気の観測開始)
[URL]

「我々は、探査機を何回かテストしたが、すべての装置は正常に働いている。4月半ばには、金星の大気の観測に完全な形で着手するだろう。」

(想像を超える、金星の驚きの姿!金星探査機「あかつき」プロジェクトサイエンティスト 今村剛)
[URL]

「初期観測の画像を見ただけで次から次へと新しい発見があり、嬉しい悲鳴をあげています。まだ静止画でしか撮っていませんが、4月以降の本格的な観測では、金星全体の大気や雲の動きを世界で初めて動画で捉えます。それにより、一気に理解が進むと思っています。」

大はしゃぎだな。

対照的といってもいい。

浮沈子は、金星大気の気象学や、X線天文学に、とりたてて興味があるわけではない。

まあ、何となく、宇宙とかの片隅の出来事として一般的な関心があるだけだが、理事長を本部長とする対策本部が設置され、全社を挙げて復旧と原因調査に取り組んでいるというイメージづくり(そうなのかあ?)をしているさなかに、もう、次の探査の話も出ている。

「「あかつき」の探査ですべてが終わるわけではありません。次は火星ミッションかもしれないし、別の惑星かもしれません。惑星の環境の成り立ちを解き明かすための新しい次の一手を、早いうちに立ち上げたいというのも私の大きな目標です。」

JAXAは大きな組織だ。

科学衛星の一つや二つで、全社的に喪に服すようなことにはならないだろう。

進行中のミッションは、1日たりとも気を抜くことは許されない。

宇宙開発の歴史は、悲惨な失敗の連続だ。

それを乗り越えて、今日までやってきたわけだ。

我が国は、少なくとも、有人宇宙活動で人的損耗を経験したことはない。

米国も、ソ連(ロシア)も、そういう痛ましい事故を乗り越えてきた。

それに比べれば、と言ってはいけないんだろうが、物的損失は贖いがつく話だ。

国際協力の手前(?)、復旧には全力を尽くさなければならないし、責任を持って原因究明に当たらなければならないだろうが、失われた衛星は、帰っては来ない。

困難なのは、どこで匙を投げるかということだろう。

通信が完全に途絶して、うんともすんとも言わなくなっても、またいつか復旧するのではないかという期待も残る。

打上で、一発で破壊されてしまうのとは異なり、運用の中止は難しい判断を要する。

はやぶさのような、技術試験衛星ならともかく、確立された技術で作り上げられた立派な衛星を諦めるというのは、重大なことに違いない。

しかし、いつかはその日が来る。

あかつきだって、一つ間違えば、どうなっていたか分からない。

その意味では、今村さんは、JAXAで一番そのことが分かっている一人だ。

衛星ひとみを失っても、我が国がX線天文学の分野から撤退することはないだろう。

地上では観測できないX線領域は、人工衛星を打ち上げるしかない。

軌道とか、衛星の重量とかを考えても、我が国の実力におあつらえ向きだしな。

それだけに、安定した運用が求められるわけだし、その中で3タテしたSXSについては、もう、何というか、お祓いしたくなる。

誰かが書いていたが、これだけ単独で打ち上げて、その分、他の観測器を積んだ別の衛星を上げた方がいいんじゃないかと思う程だ。

まあいい。


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[宇宙]

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