往生際
(火星の“しま模様”は水ではなく砂)
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「こうしたしま模様が乾燥した状態にあるのなら、最近の火星には多量の液体状の水は存在していないことになる」
もちろん、液体の水がなければ、生命の発生とかは覚束ない。
「まだ多くの疑問点が残っており、さらなる調査が必要だ」
業界の決まり文句だな。
分からないから、もっと金よこせというわけだ。
「火星が乾燥しているか湿っているかをめぐっては、最新データに基づく科学者の見解は長らく行きつ戻りつしている。」
「それでもまだ、火星には歴史の早い段階で生命が存在していた可能性が高い」
ひそかに存在しているかもしれないし、うまく隠れているだけかもしれない」
往生際が悪いというか何というか・・・。
火星の初期の頃に、液体の水があったらしいことは、概ね認められるようになってきた。
それでも、現在、生命の痕跡らしき情報は限られている。
万人が認める痕跡は、皆無だ。
生命が発生する条件が整っていたにもかかわらず、その痕跡が見いだせないというところがミソだな。
つまり、生命の発生というのは、宇宙で普遍的に起こる事象ではないことの何よりの証拠だ。
宇宙探査が進めば進むほど、そのことは明らかになっていくに違いない。
もちろん、大どんでん返しは何時でも起こり得る。
地球外生命を否定し続けるには、観測や探査を続けるしかないが、ひとたびそれが見つけられれば、オセロゲームの盤面のように、一気に常識が覆ってしまう。
百万の否定的事実の積み上げも、たった一つの発見でひっくり返る。
断定的に地球外生命を否定することができないという、構造的な問題があるわけだ。
さらには、生命というのが、化学進化の結果だということについては、一部の宗教家以外は既に広く認識されるに至っている。
神様とかそういう超自然的存在を仮定しなくても、十分説明できるというわけだ。
必要な時間と安定した環境が確保されれば、地球以外での生命の発生を否定することは困難になる。
まあ、今のところは見つからないけどな。
それは、条件が合わなかったり、合う条件のもとでの時間が足りなかったりして失敗しているだけで、一定の確立で生命は無生命から発生するといえるかもしれない。
そう考えれば、この宇宙は生命に満ち溢れていて、当然、人間くらいに進化した生命も履いて捨てるほどあり、そこそこの文明を築いているに違いないのだ。
まあ、浮沈子は、そうは思わないがな。
百歩譲って、仮にそんな文明があったとしても、我々がその文明を認識することはない。
太陽系近傍の恒星は、十分過ぎる程離れていて、そこに文明を見出すには遠過ぎるというわけだ。
観測技術が発達して、候補となる惑星の存在は多く知られるようになったが、そのことと地球外生命の存在そのものとは別の話だ。
将来確認されるかどうかも分からない。
手っ取り早いのは、生命発生のメカニズムを解き明かし、それが宇宙で普遍的に起こる可能性を示すことだろう。
それは、なかなか困難だ。
何億年という時間を掛けて、この地球上でたまたま成功しただけかもしれない偶然を、宇宙における必然として、そのプロセスを解明するわけだからな。
最近流行りの人工知能を駆使しても、簡単には分かるまい。
浮沈子に言わせれば、そういう正統的な方法ではなく、宇宙の果てに生命の存在を求めるというのは、テストの答えを探すようなもんだな。
カンニング、ズル、手抜き、八百長、何でもいい。
宇宙には、地球で生命と呼ばれているような自己増殖的な化学反応はないだろう。
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