いい大人だから
2018-03-28


いい大人だから


真剣に遊ぶ。

楽しむときには精一杯楽しまなければ、仕事にも力が入らない。

サーキットの駐車場を借り切って、タイヤの限界まで攻めながら走りまくる。

ボディが軋み、ブレーキが過熱し、サスが沈み切る。

五感でクルマの挙動を把握し、パイロンめがけてハンドルを切る。

まあ、同じクルマに乗って帰るわけだからな。

無茶はしない。

横Gに耐えながら操っていると、スポーツカーのエンジン潤滑がドライサンプでなければだめだということも納得がいく。

オイルパンの高さを薄くして、エンジン高を下げ、重心を低くして旋回力を高めるというのは、おそらく副次的な話で、とにかく潤滑を確保しなければならないからな。

ジムカーナは、平地を走るジェットコースターだ。

前後左右に揺さぶられ、胃袋とヘルメットの中の頭が揺すられる。

浮沈子は、5周が限界だったが、倍くらい走っている方もいた。

集中力というよりは、体力の問題だ。

天気も良く、車内も暑くなる。

やれやれ・・・。

真剣に遊ぶのも、楽じゃない。

こういうのを仕事にしている人は大変だな。

肉体も精神もすり減らす。

楽しみで走っているのとは異なり、タイムを削るために走る。

普段走っている時とは異なる、クルマの挙動を楽しむなんて余裕はない。

浮沈子は、そういうのは無理だな。

クルマは、まずは移動の手段であり、道楽で走らせるのがせいぜいだ。

その先の世界へは、とうとう踏み込まなかった。

それでいい。

充分だ。

機械との濃密な対話に集中し、繊細な挙動に神経を研ぎ澄まし、普段はしない大胆な操作に酔う(ちょっと車酔いもしたかも)。

文字通り、げっぷが出るほど堪能して、穏やかな帰り道を急ぐ。

ゆるゆると回るエンジン。

さっきまで吠えていたのとはうって変わって、健康につぶやきながら回っている。

これでいいのだ。

たまに健康診断しながら、普段使いで乗り続ける。

このクルマを降りる時は、ハンドルを握らなくなる時と決めている。

消耗品さえ変えてやれば、まだまだ走れる。

人間の方が、遥かに早く消耗するけどな・・・。
[自動車]
[ポルシェ]

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