ILCがいらない理由がもう一つ
2019-01-18


ILCがいらない理由がもう一つ


セルンの次期巨大加速器構想は、まだ絵に描いた餅だ。

陽子と陽子をぶつけたりする前に、ILCのように、電子と陽電子をぶつけて、ピュアな観測結果を得ようとする仕掛けを作るらしい(FCC−eeというらしい)。

それが出来るのを待っているだけで、ILCは必要なくなるような気がする。

しかし、我が国では殆ど報じられていないんだが、セルン自身が、CLICというILCとよく似たプランを進めているのだ(略語も似てるんですけど・・・)。

(Compact Linear Collider)
[URL]

「加速器の長さは11〓50 km」(自動翻訳のまま:以下同じ)

「CLICの調査は2012年に概念設計報告書(CDR)を作成し、2019年から2020年の粒子物理学のためのヨーロッパ戦略の次の更新のためのCLIC概念のための事例を提示するために取り組んでいます。」

巨大円形加速器の概念設計が今年だからな。

7年先行しているということになる。

「CLICは、3つの段階で、異なる重心エネルギー、すなわち380GeV、1.5TeV、および3TeVで構築されそして運転される」

これは、初期のILCの250GeVよりも大きい。

CLICの日本語版ウィキはないけど、ILCの中でちょこっと触れている。

(国際リニアコライダー:将来)
[URL]

「ILCとは別に、2ビーム加速方式と呼ばれる方法でより高いエネルギーへの到達を目指す、もう一つのリニアコライダー、CLIC計画の開発検討も、欧州を中心とするグループによって別途行われている。」

「リニアコライダー計画としての技術的成熟度では、ILCがCLICよりも数年以上先んじていることは、関係者の衆目の一致するところである。」

まあ、みているがいい。

我が国がILCにそっぽを向けば、CLICの風が勢いよく吹き始めるに違いない。

新しい物理学を拓くという観点からは、より高い3TeVを目指す点で、1歩先んじている(ILCは、最大でも1TeVまで)。

加速方法がユニークなので、技術的障壁が高いということなんだろうが、欧州は冷静な目でILCを巡る我が国の帰趨を見守っているのに違いないのだ。

ただし、建設のコストを見ると、費用対効果が高いとは必ずしも言えないかもな。

「長さが約11 km(7 mi)のCLICの最初の段階は、現在60〓70億CHFの費用で見積もられています。」(2017年現在)

70億スイスフランだと、今日のレートでは766,911,300,323.00 円(約7670億円)となり、ILCに匹敵する。

技術的なハードルもあるため、この見積もり自体が怪しい。

建設費の見積もりが下がることはない。

インフレとかは別にしても、雪だるまのように膨れ上がっていくのは目に見えている(えーと、雪だるまなら溶けることもあるんだがな・・・)。

まあ、どうでもいいんですが。

欧州は、したたかな戦略を組んで、世界と対峙している。

もちろん、ILCのメンバーだが、次の矢はしっかり番えている。

誘致に失敗したら、玉砕するしかない我が国とは異なる。

「CLICは30カ国以上にある70以上の研究所のグローバルプロジェクトです。」

ちょっとショボいけどな。

基礎科学からの米国の相対的な撤退(重力波検出とかありましたが)、中国の台頭、我が国の優柔不断を横目に見ながら、現実的なプロセスを進めている。

FCC−eeが現実になれば、逆にCLICがキャンセルされる話だってあるかも知れない。

CLICにとって、敵は身内にもいるのだ。


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[ノンセクション]

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