2019-12-02
仮想の中の現実と現実の中の仮想
FAAがB777Xの限界強度試験を再度行わずに、補強された構造計算だけで合格を出すという話に噛みついてから、いろいろ考えた。
浮沈子は、専門家じゃないし、下手の考え休むに似たりだが、何も考えないよりはいい。
物理の時間には、公式を覚えたり、それを適用したりして計算するけど、それらは現実の世界とは異なる仮想の条件が与えられていて、その世界で行われる架空の話だ。
現実の世界は、様々な要素が絡み、机上の計算とは異なる結果を生む。
部材の特性とか、接合方法とか、様々な要素を織り込んで、部分的な実地試験のデータとすり合わせて補正して、しかし、それでもインテグレートされた状況での実際の挙動は、組み合わせた状態でやってみなければ分からない。
しかし、何でも実地にやればいいかと言えば、そうとも限らない。
例えば、件の強度試験についても、実際に問題になるのは上空1万メートルとかの環境だが、試験はそういう環境では行われない。
実地試験といったって、完全に再現されるわけじゃないし、強度試験のような場合は、試験自体が実際とは異なる状況下で行われる。
ある意味、実地に行われるシミュレーションだ。
だから、実際に掛かる負荷に対して、余剰の負荷を加えて、まあ、このくらいでいいかという安心マージン(つーのかあ?)を得るわけだ。
1.5倍というのが正解なのかは分からない。
現行の777は、1.54倍で主翼が「ドカン!」といったし、787は複合素材製の主翼がぶっ飛んで人体に有害な繊維がまき散らされることを懸念して1.5倍で止めて撤退した(その前のテストでは、翼と胴体の接合部が破壊されたことも)。
777Xは、残念ながら1.48倍で、翼ではなくボディの方がぶっ壊れた。
上空で想定される最大の力は、それよりも少ないが、試験は地上で行われている。
ボーイングが、敢えて機内を加圧して行ったというのは、少しでも上空での実際の環境を再現して、強度試験のリアリティを高めようという、志の高い話なわけだ。
787では飛行中のキャビンの圧力を、通常、高度3000m相当に与圧するところを、1800m相当に高めている。
おそらく、777Xも同じ程度の与圧を行うんだろう。
現行の777よりも高いわけで、ひょっとしたら787の時も、試験の際に加圧していたかもしれない(未確認)。
B社だって、何でもかんでもテキトーにやって、当局をだまくらかしてぼろ儲けしようとしているわけじゃあない。
やるべきことはキッチリやったうえで、頂くものは頂くという健全な態度がないわけではないのだ。
そうでなければ、市場で生き残ることはできない。
737MAXの件は、まず、メーカーサイドでそこんところが疎かになったこと、加えて、最後の砦であるはずの規制当局が機能しなかったこと、その背景に、メーカーと当局の「プロフェッショナルな関係」があったことが問題なわけだ。
浮沈子は、777Xの話の中に、同じ臭いを嗅いでいる。
強度試験をシミュレーターの中で済ますのが悪いとは言えないかもしれない。
実地試験だって、ある意味、シミュレーションなわけで、だからこそ、機内を加圧して行ったボーイングは、その要件を加えることによりメーカーとしての責任を果たそうとしているわけだ。
黙って、最小限度の項目だけで済まして、ちゃっかり合格するよりは、実際の環境に近い状態でぶっ壊れた方がいいに決まっている。
必要な設計変更を行い、補強し、構造計算して確認する。
終局荷重の98パーセントの負荷でぶっ壊れたことが、実地の再試験を行うかどうかの判断にどの程度影響しているのかは知らない。
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